Q. ICSI(顕微授精)はどんなときに有効ですか？

体外受精にはふりかけ法とICSI(顕微授精)があります。
ふりかけ法では、卵に調製した精子をかけ、精子自身の力で受精させます。
それに対し、ICSIでは、マイクロピペットという細いガラス管に精子を一個充填し、卵に直接精子を注入し受精させます。
運動性が高いものの中から頭部の形が綺麗な精子を1個選んで注入します。

以下のような時に、ICSIが有効だと考えられます。

• 精子が透明帯を通れないとき

卵の外側は“透明帯”という厚い殻に覆われており、一度に精子がたくさん入ることを防いでいます。
精子が卵の中に入るには、この殻を通らなければなりません。
何らかの要因によって透明帯が硬化する、構造が変形するなどの異常が生じ、精子が透明帯を通過できなくなる事があります。
その時は透明帯を貫通し直接卵の中に精子を注入するICSIが有効な手段となります。
実際に、凍結保存は透明帯の硬化を引き起こすとされており、凍結保存した卵を融解して治療に用いる際はICSIが選択されます。

• 運動性のある精子が極端に少ないとき

体内でも体外でも、受精のために精子が自身の力で卵にたどり着くためには相応の運動性と数が必要となります。
精子無力症や乏精子症などで運動精子が少ない場合は、卵にたどり着き受精が成立する可能性が低いため、ICSIが有効となります。

• ふりかけ法で受精しないとき

ふりかけ法で体外受精を試みたが、受精卵を得ることができなかった。
そのような場合、再度ふりかけ法を試みるよりICSIを選択することが多いです。

この他にも、体外受精に精巣内精子を用いるなど、少し特殊な例ですが、これもICSIの適応となります。
上に挙げた状況においてはICSIが有効というよりも、ICSI以外で受精させられる手段がないと言っても過言ではありません。
斯くして、今日の生殖医療において、ICSIはなくてはならない技術となっています。

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