Q. 新鮮胚移植と凍結-融解胚移植について教えてください。

新鮮胚移植:Fresh embryo transfer

新鮮胚移植というのは、その名の通り新鮮な、凍結保存しない胚を移植に用いる方法です。採卵し体外で受精を促し培養した胚を、その周期(採卵から数日後)に子宮に戻します。凍結、融解という過程を経ず行うので、採卵から最も早く移植することができ、また費用の面でもご負担は少なくなります。

 

凍結-融解胚移植:Frozen-thawed embryo transfer

それに対して、採卵周期では移植を行わずに良好胚を(または新鮮胚移植を行い、残りの良好胚を)凍結して、次周期以降に融解して移植を行う方法が凍結-融解胚移植です。

・凍結-融解のリスク

胚の凍結は、ガラス化法という、最も胚へのダメージが少ない方法で行っていますが、当クリニックに於いて融解時の完全生存率は96.3%ほどです。残念ながら、残り3.7%には、変性、または一部に変性がみられ、そのうちの1.4%は移植を行わずに廃棄胚となっています(2016/09~2017/08当院データによる)。2020年現在、凍結液やデバイスの改良により生存率は更に向上していますが、それでもリスクは“0”ではありません。

・凍結-融解のメリット

移植のタイミングを調整できることにあります。胚の凍結保存は細胞の生存活動(代謝や分裂など)を凍結するため、仮に受精5日目に凍結した胚は、一年後に融解しても受精5日目と換算されます。融解日は調整可能なので、着床の準備が整い移植予定日が決定すれば、逆算して融解することも可能となります。

一般的に、胚は受精5日目ほどで胚盤胞になり子宮内膜に着床するのが平均的な発育速度と考えられています。このとき、胚が発育するのと同時に、それを受け入れる子宮内膜も発育をしており、その足並みがそろっていないと着床率は下がります。つまり、胚と子宮はそれぞれの着床に適したタイミングがあり、着床・妊娠を成立させるためには双方のタイミングを合わせる必要があります。

体外での培養においては、胚盤胞に達するのが受精6日目、7日目になることもたびたび起こります。この時点で、内膜の発育は先に進み、胚を受け入れる期間が過ぎている可能性も考えられるので、新鮮胚移植予定であっても中止となり、凍結-融解胚移植に向けての凍結を行うことになります。

ほかには、調節卵巣刺激により卵胞が想定よりも非常に多く発育した場合、卵巣過剰刺激症候群に陥るリスクが懸念されます。こういった状況で新鮮胚移植を実施すると更にリスクを高める原因になるので、安全のために胚移植を回避して全胚凍結をする場合があります。

凍結胚移植の中には、自然の排卵周期に合わせての移植と、ホルモンを補充しておこなう人工周期での移植があります。人工周期では、ホルモンを補充することで子宮内膜を調整し、移植予定胚の発育ステージに内膜の発育を同期させ、着床環境を整えることができます。また、月経に合わせて、事前に診察日や移植日を決めることができるので利便性が高いと言えます。

以上のように、凍結融解による胚へのリスク、着床環境、経済的・時間的なご負担などもそれぞれです。採卵数、発育の状況なども合わせて、患者様のご希望、ご都合をお伝え頂いて、ご相談の上決定していきます。

 

近年の報告

双方メリットがあり、リスクがある。では、実際どちらを選択するのが良いのでしょうか。
気になるのは、どちらを選択したほうが妊娠する可能性が高いのか?ということになると思います。近年、いくつかの研究報告で凍結-胚移植の方が新鮮胚移植より妊娠に至る率が高いという報告があります。例えば、合計1650人の患者さんの移植結果を解析した論文では、出生率が新鮮胚移植では40%だったのに対し、凍結-融解胚移植では50%と10% も高かったと報告されています(Daimin et al., The lancet, 2019)。

この報告を素直に受け取ると、凍結-融解胚移植の方が、妊娠する確率が高いんだー。となりますよね。他にも見てみますと、同じように移植法を比較検討した研究報告で、2523人の患者さんに対して新鮮もしくは凍結-融解胚移植を実施、その際に採卵数に応じてグループ分けして比較しています。その結果、採卵数が少ないグループでは両移植法での出生率は差が無かったのに対し、採卵数の多いグループでは凍結-融解移植の方が高い出生率であった。と報告されてます(Fazilet et al., Plos one, 2020)。

 

//////////////////////////////////////////////////////////////////////

お問い合わせ
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-41-7 池袋東口ビル7F
Tel 03-6907-2555 / FAX 03-6907-3555
※ 初診など外来診療は全てリプロダクションオフィスで行います

診療案内 Clinical info

More

初診の方
8:15〜12:00 ※1 ×
14:30〜18:00 × ※2 ×
※1 / 8:15〜11:00 ※2 / 13:45~15:30
再診の方
8:15〜12:30 ※1 ※3
14:30〜18:30 × ※2 ×
※1 / 8:15〜11:30 ※2 / 13:45~16:00
※3 日曜・祝日の診察・処置は松本レディースクリニックにて完全予約制で行います。

ネットから予約も可能です、直接のご来院でも可能です。
ただし、日曜祝日は予約制です。お問い合わせください。

区検診:区検診は当院では受け付けておりません。

初診の流れなどの詳細はこちらからご確認ください。

#松本レディースクリニック #松本レディースリプロダクションオフィス #松本レディース #不妊 #不妊治療 #妊活 #妊活スタート #ベビ待ち #池袋 #不妊クリニック #松本玲央奈 @ 松本レディースクリニック

ピックアップ記事